「ぐすっぐすっ,うぇっうぇっ・・・」
「この子ったらまたメソメソして.オバケでも見たの?」
「・・・うん,怖かったよぅ.」
「ウソよ,そんなのいるわけないでしょ.」
「だって...だってそいつ,すごく背が高くてゆ~らゆ~らしてて,超音波みたいな変な音出すんだ...オバケじゃなかったらエイリアンだよ.」
「それで,そのオバケだかエイリアンがあなたに何かしたの?」
「ぼくを食べようとしたんだ.」
「食べる!?」
「あいつが変な音出して近寄ってきたとき,ぼく,身体がしびれて動けなくなったんだ.そしたらあいつ,身体からツルみたいな触手出して,こっちに向かってにゅ~って伸ばしてくるんだよ.で,それが目の前に来たと思ったら,先っぽがワッて分かれて,ぐにゅぐにゅ動くんだよ~! ぼく,怖くて怖くて逃げようとしたら,それが身体に巻きついてきて,それで,それで...えーん,うえーん!」
「はいはい,もうわかったから泣かないの.パパがいつも言ってるでしょ,男の子は怖くても泣かないんだって.」
そう慰めながら母親は,それがオバケじゃなくてニンゲンという動物であること,触手は気持ち悪いけど慣れなくちゃいけないこと,自分たち犬はみんなそれを克服してきたんだということを,ちょっぴり臆病な息子にどう説明したものかと頭を悩ますのでした.
** まろの告白 **
いや,マジそう思うっすよ.
ペットや家畜の最初の「試練」って,まず人間の手を克服することなんじゃないかって.
だって怖いですよね,身体は動かずに棒みたいなのが自分に向かってぬ~って伸びてくるんだから.
人間ってど-してもまず手を出しちゃうしね.
Sunday, July 08, 2007
Thursday, June 07, 2007
ささやかな手柄と重大なミス
ある日,ジョンのご主人が散歩の途中で腕時計を落としてしまいました.
それを聞いたジョンは,何とか役に立ちたいと辺りを調べ始めました.
匂いを辿るとすぐに,近くの公園に落ちていたことがわかりましたが,肝心の時計は見知らぬ男が持ち去った後でした.
男の匂いは公園横の停留所で消えていて,どうやらそこからバスに乗ったようでした.
夕食まで時間があったので,ジョンはバスのタイヤ跡を追ってみることにしました.
ところがそれは延々と続き,バスを降りた男の足跡を見つけたのは,何十キロも離れた港町でした.
そこは人や魚や磯の匂いが入り乱れていて,追跡は困難でしたが,一心不乱に調べると何とか行動を辿ることができました.
男はすでに出航した船に乗って,海外に逃れた後だったのです.
さすがにどうしようかと迷ったジョンでしたが,一瞬,時計を持って帰ったときのご主人の笑顔が脳裏に浮かぶと,勇気を振り絞って海に飛び込みました.
2ヵ月後,とうとうジョンは太平洋を泳ぎ切り,とある南米の港に停泊している船に辿り着きました.
男はそこで船から降りたようです.
その港は汚く物騒な町で,タチの悪い酔っ払いや悪ガキどもを避けながら,ジョンは懸命に足取りを追いました.
そしてついに,男が出入りする建物を突き止めました.
勇んで部屋に飛び込むと,そこは麻薬の取引場でした.
急にドアが開いたので部屋はパニックになり,ジョンは銃で武装した35人の荒くれ男たちと戦う羽目になってしまいました.
慣れない乱闘に戸惑いながら34人をノックアウトしたジョンでしたが,運の悪いことに,取り逃がした一人がまさに腕時計を拾った男でした.
男は世界を股にかける麻薬の運び屋だったのです.
その後もジョンは男を追いかけ,2つの海と3つの大陸を横断し,3000m級の山を何度も越え,北極点を踏みジャングルを抜け砂漠を渡りました.
その間,麻薬組織の紛争に巻き込まれ,3つのシンジケートと2つのテロ集団と1つのヤクザを壊滅させました.
そのおかげで職を失なう羽目になった男は,イスタンブールの小汚い質屋で腕時計を売り払いました.
ジョンは時計を返してくれるよう頼みましたが,強欲な質屋の主人は首を縦に振りません.
それでも粘り強く交渉した結果,1年間の無償労働の後,ついに腕時計を取り戻すことができました.
そしてジョンは帰路につき,さらに2つの大陸と海を横断し,やっとのことで故郷の街に辿りつきました.
さすがに疲労で倒れそうでしたが,懐かしい家の垣根が見えたとたん,ジョンは思わずワンと一声吠えてしまいました.
そのままヨロヨロ近づいていくと,開いた玄関の向こうにご主人の姿が見えるではありませんか!
あまりの嬉しさに,足は勝手に駆け出しています.
そしてそのまま玄関に駆け込もうとしたとき,ご主人が顔をしかめて言いました.
「ノー」
ジョンの足が汚れていたのでした.
おわり
**りん大姉の耳うち**
あたしがいなくなってちょっとは成長するかと思ったけど,まろは相変わらずこんなこと書いてるのね.
何というか「救われない魂」なのよね,彼って.
作品?
そーねー,着想も風刺もまぁまぁだけど,唯一残念なのが「おもしろくない」ってとこかしら.
はい,次回頑張りましょうね.
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