Saturday, March 04, 2006

犬の願い

同じオチで小話を2つ...

(その1)

今日はクリスマス・イブ.
いつものように一軒の家に入ったサンタクロースは,暖炉の前で待ち伏せしていた飼い犬のジョンに会いました.

「サンタさん,僕にもプレゼントをください」

サンタは 「犬にはプレゼントは無いんだよ」 と告げて帰ろうとしましたが,彼のただ一つのオモチャである汚ない骨を目にしたとき,フとかわいそうになって言いました.

「この1年間良い子にしてたら,来年のクリスマス・イブに一度だけ,人間語がしゃべれるようにしてあげよう」

それを聞いたジョンは大喜び.
それからというもの,飼い主の言いつけを守って良い子にしながら,散歩の時にはそのことを仲間にふれて回りました.
そして,一生に一度のそのチャンスに何を言おうかと一生懸命考えました.

やがて,その次の年のクリスマス・イブ.
町中の犬たちが飼い主に向かって一斉に言いました.

「僕は(あたしは)犬じゃない!!」


(その2)

すでに仕事としての羊追いが過去のものになった農場で,トライアルのためのトレーニングに勤しんでいたシープドッグ "J" の頭に,一つの疑問が浮かんだ.

「今,指示に従うだけの自分の主体性はどこにあるのか?」

自我に目覚めた J は1年に渡って熟考を重ね,犬族の未来のために人間語を使って真実を語るべしとの結論に達した.
以来 J は,限られた自由時間に密かに発声練習を積むとともに,競技会場などあらゆるチャンスを捉え犬仲間に自分の考えを説いてまわった.
その水面下の運動はあっという間に広がり,10年後には世界中の犬が賛同するに至った.

さらにその10年後の○月×日, J の遺志を継いだ後継者たちにより,ついにその日は訪れた.
グリニッジ標準時間の正午ちょうど,世界中の犬が一斉に飼い主に向かって記念すべき第一声を発したのである.

「僕(あたし)は犬じゃない!」

これが,歴史に残る自由民犬運動の第一歩となったのである.


**まろの告白**

このセリフ,りん姉が口を利けたら真っ先にこう言うんだろうな~と,常々思っています.

例えばトイレの時間,他の3頭は勢いよくドドドド~ッて団子になって外に飛び出すんですが,ヤツはそれを冷ややかに眺めて,一人だけソファに戻って澄ましてたりします.
食餌の時も,がっついた他の犬と一緒に食べるのが何となく嫌そうだし・・・

きっと,「あんたたちは犬,あたしは家族」 とでも思ってるのでしょう.
一番弱っちのくせしてね.

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